2026年07月24日(金)
- パワーエレクトロニクス基礎
パワエレ開発とは?設計から実機評価までの流れをわかりやすく解説【パワエレ開発シリーズ②】
この記事では、パワエレ開発用コントローラ「PE-Expert4」などの開発環境にも関連するパワエレ開発について、要求整理から設計、試作・実装、確認・評価までの流れを解説します。
また、設計した内容と評価項目の対応関係を整理するV字開発についても分かりやすく紹介します。
パワーエレクトロニクス(パワエレ)の製品や研究装置を形にするには、電力変換回路と、それを動かす制御システムの両方を検討します。
要求を整理し、システムを設計・実装・評価しながら完成度を高めていくことが、パワエレ開発の基本的な進め方です。
パワエレ開発ではなぜ電力変換回路と制御システムを連携させるのか?
パワエレ製品では、インバータやコンバータなどの電力変換回路が電力を変換します。制御システムは、センサから取得した電圧や電流などを使って演算し、電力変換回路へPWM信号などを出力します。
電力変換回路の仕様と、制御方式・制御プログラムの動作条件は互いに関係しています。例えば、使用するセンサの仕様はA/D変換の設定に関係し、パワー半導体やゲート駆動回路の特性はPWM出力の設定に関係します。制御周期や演算内容は、制御用ハードウェアに求められる処理性能にも影響します。
そのため、パワエレ開発では、電力変換回路と制御システムを組み合わせて動作を確認し、得られた結果を回路設計と制御設計へ反映しながら完成度を高めます。
パワエレ開発はどのような工程で進むのか?
パワエレ開発の全体像は、要求整理、設計、試作・実装、確認・評価という四つの区分で捉えると分かりやすくなります。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 要求整理 | 実現する機能、性能、動作条件などを整理する |
| 設計 | システム構成、電力変換回路、制御方式などを検討する |
| 試作・実装 | 回路や実験システムを構成し、制御プログラムを制御用ハードウェアへ実装する |
| 確認・評価 | 各部の動作を確認し、システムの性能や要求との対応を評価する |
各区分は互いに連携しています。設計とシミュレーションを並行して進めたり、評価結果を回路設計、制御設計、制御プログラムへ反映したりしながら、検討と確認を重ねていきます。
V字開発では設計と評価の対応関係をどのように捉えるのか?
要求、設計、実装、評価の関係を表す方法の一つに、V字開発があります。V字の左側では、要求をシステム設計や詳細設計へ落とし込みます。中央下では、設計内容を回路やプログラムとして形にします。右側では、実装した内容を段階的に確認し、システムや要求との対応を評価します。
V字の左右を結ぶ線は、左側で決めた内容を右側のどの評価で確認するかを表します。例えば、詳細設計に対して各機能の確認を行い、システム設計に対してシステム全体の評価を行い、要求仕様に対して最終的な要求確認を行います。
パワエレ開発にV字の考え方を当てはめると、電力変換回路の試作や制御プログラムの実装に加えて、何をどの段階で確認するかまで含めて開発全体を捉えやすくなります。
パワエレ開発における要求整理とは?
開発の出発点となるのが要求の整理です。何を動かすのか、どのような電力を変換するのか、どのような性能や動作が求められるのかを明確にします。
要求として整理する項目は、開発対象によって変わります。例えば、入出力の電圧・電流、応答、効率、使用条件、必要な入出力信号などが検討対象になります。
ここで整理した内容は、設計の前提になるとともに、開発したシステムを評価するときの基準になります。
パワエレ開発ではシステム構成・電力変換回路・制御方式をどのように設計するのか?
要求が整理できたら、システム構成をどのようにするかを検討します。電源、電力変換回路、制御用ハードウェア、センサ、負荷などの役割を整理し、電力と信号の流れを設計します。
設計ポイント | 電力変換回路を設計する
回路設計では、目的とする電力変換に合わせて回路方式や回路定数などを検討します。パワー半導体をどのようにスイッチングし、必要な電圧や電流を得るかが設計の中心になります。
設計ポイント | 制御方式を設計する
制御設計では、測定した電圧や電流などを使って、出力をどのように目標値へ近づけるかを検討します。
設計した制御方式は、A/D変換値の取得やPWM出力の更新などの処理と組み合わせ、制御用ハードウェア上で動作するプログラムとして実装します。
パワエレ開発ではシミュレーションをどのように活用するのか?
回路動作や制御応答の検討には、シミュレーションを活用できます。 回路シミュレーションでは電圧や電流、スイッチング動作などをモデル上で確認し、 制御シミュレーションでは指令や条件を変化させたときの応答などを検討します。
シミュレーションは、 回路定数や制御パラメータを検討したり、 実機評価の結果とモデルの結果を比較したりする場面でも利用されます。 設計と評価をつなぐ手段の一つです。
パワエレ開発では回路の試作と制御プログラムの実装をどのように進めるのか?
設計内容を実際に動かせる形へ移す段階では、 電力変換回路の試作と 制御プログラムの実装を進めます。 回路開発では、 電力変換回路やセンサを含む回路、 またはそれらを組み合わせた実験システムを試作・構築します。
制御プログラム開発では、 設計した制御方式を C言語などで記述し、 制御用ハードウェアで実行できるプログラムとして実装します。 モデルベース開発では、 モデルから制御コードを生成して実装する方法もあります。
パワエレ開発ではどのように動作を確認し、性能を評価するのか?
試作・実装した回路と制御プログラムは、 各部の動作からシステム全体へと確認範囲を広げます。 制御信号や測定信号を確認し、 電力変換回路と制御システムを組み合わせた状態で動作を確かめ、 最終的に要求した性能との対応を評価します。
評価には、 実際の電源、 電力変換回路、 負荷装置、 計測器などを使用します。 また、開発内容に応じて、 制御用ハードウェアと リアルタイムシミュレータ(HILS)を接続する HILSが利用されることもあります。
パワエレ開発では評価結果をどのように回路設計と制御設計へ反映するのか?
評価によって得られた波形や測定値を確認し、 回路定数、 制御パラメータ、 制御プログラムなどへ反映します。 調整後は再び動作を確認し、 要求との対応を確かめます。
パワエレ開発では、 電力変換回路の仕様と 制御プログラムの動作条件が互いに影響します。 回路、 センサ、 入出力のタイミング、 制御演算などを関連付けて 評価結果を確認することが大切です。
まとめ|パワエレ開発の流れとV字開発の考え方

パワーエレクトロニクス開発の流れ(要求整理・設計・試作・評価・フィードバック)
パワエレ開発では、 要求整理を行い、 システム構成、 電力変換回路、 制御方式などを設計します。
設計内容に基づいて回路や実験システムを試作・構築し、 制御プログラムを 制御用ハードウェアへ実装します。
その後、各部の動作からシステム全体まで段階的に確認し、 評価結果を回路設計と制御設計へ反映します。 V字開発は、この設計と評価の対応関係を捉えるための考え方です。
次回は、こうした設計、試作・実装、確認・評価の各場面で使用する装置や開発環境について紹介します。
※パワエレ開発入門シリーズについて
本シリーズは、以下の弊社製品に関連したパワエレの基礎知識を解説するシリーズです。
-
デジタル制御システム PE-Expert4
パワエレ開発用コントローラ -
PE-ViewX
プログラム作成からデバッグまで効率的な作業環境を構築できる統合開発環境 -
PE-Expert4 Toolbox™ Simulink®対応
Simulink®で作成した制御モデルをPE-Expert4へ実装するコード自動生成ツール -
PE-Inverter
研究・開発・実験・組込み用に設計されたインバータユニット
パワエレの基礎から、インバータ制御、モータ制御、評価・開発まで、順を追って分かりやすくご紹介します。
関連製品・開発ソリューション
パワエレについてさらに学びたい方へ
Mywayプラスでは、インバータやPWM、モータ制御など、パワーエレクトロニクスの基礎を解説するコラムを公開しています。
パワエレの基礎を学んだ後は、インバータやモータ制御に関するシリーズもぜひご覧ください。
関連記事|モータ制御・ベクトル制御シリーズ
モータ制御、ベクトル制御、dq変換、実機評価、チューニングまでを体系的に学べる関連記事一覧です。
📘 初級編
モータ制御の基礎からベクトル制御・dq変換まで順番に学べます。
📕 中級編
実機評価やベクトル制御のチューニング、トラブルシューティングまでを体系的に解説します。
📚 用語集・まとめ記事
シリーズ全体の復習や、専門用語の確認に役立つ記事です。
関連記事|インバータ基礎・仕組みシリーズ
インバータの基礎からPWM制御、回路構成、設計の考え方までを体系的に学べる関連記事一覧です。
📘 初級編
インバータの基本構造やPWM制御、電力変換の仕組みを順番に学べます。
📕 中級編
PWM設計やインバータ設計で起こりやすい課題、設計時に押さえておきたいポイントを体系的に解説します。
📚 用語集・まとめ記事
インバータの基礎知識を整理し、シリーズ全体を体系的に学ぶための記事です。