2026年06月01日(月)
- パワーエレクトロニクス基礎
三相モータの通電方式とは?120度通電・正弦波駆動・ベクトル制御の違い【モータ制御シリーズ 入門④】
三相モータの代表的な通電方式には、120度通電、正弦波駆動、ベクトル制御があります。本記事では、それぞれの仕組みや特徴、違いについて初心者向けにわかりやすく解説します。
前回の記事では、三相モータがU相・V相・W相に電流を流して回転する仕組みを解説しました。
三相モータでは、固定子の巻線に電流を流すことで磁界を作ります。そして、U相・V相・W相に流す電流の組み合わせやタイミングを変えることで、磁界の向きを変化させます。
回転子は、その磁界の向きを追いかけるように回転します。つまり、三相モータを制御するうえでは、「どの相に、どのタイミングで、どのような電流を流すか」が重要になります。
本記事では、代表的な三相モータの通電方式である120度通電、正弦波駆動、ベクトル制御の違いを、初心者向けにわかりやすく解説します。
三相モータの通電方式とは?
120度通電・正弦波駆動・ベクトル制御の違いをわかりやすく解説
通電方式とは、モータの各相にどのような電流を流すかを決める方法です。
三相モータでは、U相・V相・W相に電流を流すことで磁界を作ります。この磁界の向きを変化させることで、回転子を連続的に回転させます。
ただし、電流の流し方にはいくつかの種類があります。代表的なものが、120度通電、正弦波駆動、ベクトル制御です。
これらはすべて三相モータを回すための方法ですが、電流の扱い方が異なります。
簡単に言うと、120度通電は「通電する相を段階的に切り替えて回す方式」、正弦波駆動は「三相の電流をなめらかに変えて回す方式」、ベクトル制御は「電流の役割まで分けて高精度に制御する方式」です。
三相モータは通電方式によってどのように変化するか?
結論から言うと、通電方式によってモータ内部にできる磁界の変化の仕方が変わります。
通電方式によって変わるのは、モータ内部にできる磁界の変化の仕方です。
三相モータでは、U相・V相・W相に電流を流すことで磁界を作ります。通電する相や電流の大きさを変えると、磁界の向きも変わります。
磁界の向きが変わると、回転子が追いかける方向も変わります。この変化を連続的に行うことで、モータは回転し続けます。
つまり、通電方式の違いは、「磁界の向きをどのように変化させるか」の違いでもあります。
磁界の向きが段階的に変われば、回転も段階的になりやすくなります。磁界の向きがなめらかに変われば、回転もなめらかになりやすくなります。さらに、電流の役割まで分けて制御すれば、トルクや効率をより細かく調整しやすくなります。
120度通電とはどのような方式か?
120度通電とは、U相・V相・W相のうち2つの相に電流を流し、残りの1相には電流を流さない状態を順番に切り替えて、モータを回転させる方式です。
たとえば、あるタイミングではU相からV相へ電流を流し、次のタイミングではU相からW相へ電流を流す、というように、通電する相の組み合わせを切り替えていきます。
通電する相の組み合わせが変わると、固定子の中にできる磁界の向きも変わります。回転子は、その磁界の向きを追いかけるように動くため、結果として回転します。
120度通電では、磁界の向きが段階的に変化することが特徴です。
そのため、構成は比較的シンプルですが、回転のなめらかさやトルクの変動という面では課題が出る場合があります。
一方で、制御がわかりやすく、比較的低コストで構成しやすいため、ファンやポンプ、小型機器などで使われることがあります。
正弦波駆動とはどのような方式か?
正弦波駆動とは、U相・V相・W相に正弦波状の電流を流し、磁界の向きをなめらかに変化させる方式です。
120度通電では、通電する相の組み合わせを段階的に切り替えるため、磁界の向きも段階的に変わります。
一方、正弦波駆動では、三相に流す電流をなめらかに変化させます。U相・V相・W相には、タイミングが少しずつずれた電流を流します。
その結果、モータ内部にできる磁界の向きもなめらかに変化し、回転子もよりスムーズに回転しやすくなります。
このため、正弦波駆動は、振動や騒音を抑えたい用途や、低速でもなめらかに回したい用途に向いています。
ただし、120度通電に比べると、各相の電流を細かく調整する必要があるため、制御はやや複雑になります。
ベクトル制御とはどのような方式か?
ベクトル制御とは、電流をトルク成分と磁界成分に分けて考え、高精度に制御する方式です。
ベクトル制御とは、三相に電流を流すだけでなく、その電流がモータの中でどのような役割を持つのかまで考えて制御する方式です。
120度通電では、通電する相を段階的に切り替えます。正弦波駆動では、三相の電流をなめらかに変化させます。
ベクトル制御ではさらに一歩進んで、モータ電流を「トルクを生む成分」と「磁界を作る成分」に分けて考えます。
これにより、必要なトルクをすばやく出したり、効率よく回したりしやすくなります。
つまりベクトル制御は、単にモータをなめらかに回すだけでなく、電流の役割まで分けて高精度に制御する方式です。
そのため、電気自動車、産業機器、サーボ用途など、高精度な制御が求められる場面で使われます。
一方で、モータの状態を把握しながら電流を細かく制御する必要があるため、120度通電や正弦波駆動よりも高度な制御方式です。
120度通電・正弦波駆動・ベクトル制御の違いは何か?
結論から言うと、3つの方式の違いは「電流をどこまで細かく扱うか」にあります。
120度通電、正弦波駆動、ベクトル制御は、いずれも三相モータを回すための方式です。
ただし、違いは「電流をどこまで細かく扱うか」にあります。
120度通電は、通電する相を切り替えて回すシンプルな方式です。正弦波駆動は、三相の電流をなめらかに変化させて回す方式です。ベクトル制御は、電流の役割まで分けて高精度に制御する方式です。
まず結論として、120度通電はシンプルさ、正弦波駆動はなめらかさ、ベクトル制御は高精度制御を重視した方式です。
| 方式 | 直感的な理解 | 特徴 |
|---|---|---|
| 120度通電 | 通電する相を順番に切り替えて回す | 構成が比較的シンプル。磁界の向きが段階的に変わる |
| 正弦波駆動 | 三相の電流をなめらかに変えて回す | 磁界の向きがなめらかに変わり、振動や騒音を抑えやすい |
| ベクトル制御 | 電流の役割まで分けて高精度に制御する | トルクや効率を細かく制御しやすい |
120度通電・正弦波駆動・ベクトル制御はどのような用途に適しているか?
通電方式は、求められる性能や用途によって使い分けられます。
120度通電は、構成が比較的シンプルで低コストなため、ファンやポンプ、小型機器などで採用されることがあります。
正弦波駆動は、振動や騒音を抑えながらスムーズに回転させたい用途で使われます。
ベクトル制御は、応答性や効率、高精度なトルク制御が求められる電気自動車、産業機器、サーボ用途などで使われます。
このように、どの方式が優れているというわけではなく、用途や必要な性能に応じて選ばれます。
シンプルさと制御性能の違いとは?
通電方式を理解するうえで重要なのは、シンプルさと制御性能には違いがあるという点です。
120度通電は、構成が比較的シンプルで扱いやすい方式です。ただし、磁界の向きが段階的に変わるため、トルクの変動や振動が出やすい場合があります。
正弦波駆動は、各相に流す電流をなめらかに変化させることで、磁界の向きもなめらかに変化させます。そのため、振動や騒音を抑えやすくなります。
ベクトル制御は、さらに一歩進んで、電流をトルクに関わる成分と磁界に関わる成分に分けて制御します。そのため、応答性や効率を重視する用途に向いています。
このように、通電方式は用途や必要な性能に応じて選ばれます。
ベクトル制御につながる考え方とは?
ベクトル制御を理解するためには、「電流の役割を分けて考える」という発想が重要です。
120度通電や正弦波駆動では、U相・V相・W相にどのような電流を流すかが中心になります。
一方、ベクトル制御では、その電流がモータ内部でどのような役割を持つのかまで考えます。
モータ電流には、回転する力であるトルクに関わる成分と、磁界を作る成分があります。ベクトル制御では、この2つを分けて扱うことで、より高精度な制御を行います。
つまり、ベクトル制御は、単に三相に電流を流すだけでなく、「電流をどの向きに、どの役割で使うか」を考える制御方式です。
この考え方を理解すると、次の記事で解説するベクトル制御の仕組みが理解しやすくなります。
三相モータの通電方式を理解するうえで押さえるべきポイントとは?
三相モータの通電方式を理解するうえで重要なのは、三相に流す電流の形や考え方によって、モータの回り方が変わるという点です。
- 三相モータでは、U相・V相・W相に電流を流して回転させる
- 通電する相や電流の大きさが変わると、磁界の向きも変わる
- 120度通電は、通電する相を段階的に切り替える方式である
- 正弦波駆動は、各相に流す電流をなめらかに変化させる方式である
- ベクトル制御は、電流を役割ごとに分けて高精度に制御する方式である
- 方式によって、なめらかさ、騒音、効率、制御性能が変わる
まずは、120度通電、正弦波駆動、ベクトル制御は「三相モータにどのような電流を流すかの違い」と理解すると、全体像をつかみやすくなります。
【まとめ】三相モータの通電方式の違いとは?
三相モータの代表的な通電方式には、120度通電、正弦波駆動、ベクトル制御があり、それぞれ特徴や用途が異なります。
120度通電は、通電する相を段階的に切り替えてモータを回す方式です。磁界の向きも段階的に変わるため、構成はシンプルですが、トルクの変動や振動が出やすい場合があります。
正弦波駆動は、三相に流す電流をなめらかに変化させることで、磁界の向きもなめらかに変化させる方式です。これにより、静かで安定した回転を実現しやすくなります。
ベクトル制御は、電流をトルクに関わる成分と磁界に関わる成分に分けて制御することで、より高精度なモータ制御を実現する方式です。
これらの違いを理解することで、用途に応じてどのような制御方式が使われるのかを整理しやすくなります。
次の記事では、ベクトル制御とは何か、どのように電流を分けて制御するのかを詳しく解説します。
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