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使用事例


ワイヤレス充電のコイル位置がずれても
充電時間が変わらない制御システム

受電側の電流/電圧を制御することでコイル間距離が拡大(結合係数が3分の1に低下)しても同じ時間で満充電できるワイヤレス充電の制御システムを実現しました。


株式会社プリンシパルテクノロジー
パワエレ技術コンサルタント
大羽 規夫 氏

メーカーでパワエレエンジニアとして電動車両用の充電器を開発していたことをきっかけに、 ワイヤレス給電の研究・開発を独自に開始。
伝達関数を使って電気系と磁気系を統合した解析を進め、コイルの位置ずれによって伝送電力が低下するという課題をパワエレ技術だけで解決したシステムの開発に成功。
現在は企業とワイヤレス給電の共同開発を進めながら、この技術と理論を伝えるセミナーの講師を務めている。セミナー受講者からは「パワエレも電磁気も伝達関数で考えれば意外と簡単でした!」と好評。

はじめに


一般的に「ワイヤレス」と言うと携帯電話やWi-Fiなどの無線通信を連想されると思います。しかし、「ワイヤレス充電」と呼ばれる技術分野において、電気自動車用バッテリの充電など比較的大きな電力を扱う場合は無線通信技術ではなくパワーエレクトロニクス技術を使います。
 ワイヤレス充電で使う送受電コイルを空芯トランスと考えれば、あとは高周波インバータを使ったパワエレシステムであると理解して問題ありません。弊社では、このような理解に基づいて、送受電コイルの距離の変化や相対位置のずれによって伝送電力が安定しないという課題をパワエレ技術で解決しました。
 本報では、弊社のこの特許技術(特開2015-2598 非接触電力伝送装置)を応用したワイヤレス充電システムについて、パワーエレクトロニクス回路用シミュレータ PSIM を使ったシミュレーションの回路モデルとその結果を紹介します。

ワイヤレス充電システムの開発課題と解決方法


ワイヤレス充電器は、携帯電話や電動歯ブラシの充電などで多くの実用製品が開発されていますが、その一方で電気自動車のワイヤレス充電は要望が多いにもかかわらず普及していません。これは、駐車する度に送受電コイル間の距離や位置がずれることによって、伝送電力が低下して所定の時間内に充電が完了できなくなるという課題があるためです。
 弊社では、このような課題を解決するために、受電側に無効電力発生装置を設けることで受電電力を安定に制御する方式を考案し特許出願しました。図1は出願した特許の要約図です。

図1 特許要約図(特開2015-2598 非接触電力伝送装置)

この方式ではコイルの位置関係が変化したり負荷が増減したりしても、無効電力発生装置が所定の無効電力を出力することで必要な伝送電力を維持することができます。この技術を使ってコイル間の距離や位置がずれても所定の時間で満充電できるように伝送電力を制御することが可能となります。

PSIM回路


PSIMはパワーエレクトロニクス回路用のシミュレータであり、さらにコイルやトランスを詳細に模擬するための磁気系のモデルも用意されているため、ワイヤレス充電システムがパワエレ回路であることが理解できればPSIMを使ってシミュレーションすることが可能です。

弊社が考案したワイヤレス充電システムをシミュレーションしたPSIM回路の主回路部を図2に示します。


① 電力供給用インバータ
一定周波数(100kHz)・Duty 50% でスイッチングする単相フルブリッジインバータ
② 送受電コイル磁気回路
磁束経路のインダクタンスファクタ(パーミアンス)を規定したコイルおよび伝送空間で構成される磁気回路
③ 整流/充電回路
受電電力を全波整流してバッテリ(Li-Ion Battery モデル)に電力を供給する充電回路
バッテリの初期状態は完全放電状態 : SOC = 0
④ 無効電力発生用インバータ
充電制御回路が出力するゲート指令によって無効電力を発生する単相フルブリッジインバータ

本シミュレーションにおける送受電コイル磁気回路モデルは、送電コイルおよび受電コイル単体でのインダクタンスファクタを 0.96 [μH]とし、相互インダクタンスに寄与する伝送空間のインダクタンスファクタを 0.96 [μH]×結合係数 と設定しています。

図2 PSIM回路(主回路部)

次に制御回路部を図3に示します。 ゼロクロス検出」回路で受電電圧の基準位相を決定し、「位相シフトゲートパルス生成」回路で基準位相から位相シフトしたゲートパルスを無効電力発生用インバータへ出力しています。位相シフト量は、バッテリが要求する充電仕様に応じて「充電制御回路」と「Vd制御回路」で決定され、このシミュレーション回路では、CC電流:0.7A  CV電圧:42V としてCC-CV 充電されるように位相シフト量を決定しています。
 このように位相シフト量を操作して無効電力発生用インバータが発生する無効電力の大きさを調整することで、バッテリなどの負荷が必要としている電力の安定したワイヤレス伝送を実現したのが弊社の考案した特許技術です。

図3 PSIMでの制御回路部

シミュレーション結果


送電コイルと受電コイルとの結合係数が 0.1、0.2、0.3の場合についてシミュレーションした結果を、それぞれ、図4-1、図4-2、図4-3に示します。

図に示した各シミュレーション波形は以下です。
SOC :バッテリの充電状態(State of Charge)
Vbt :バッテリ充電電圧 [V]
Ibt :バッテリ充電電流 [I]
P_watt :無効電力発生用インバータの出力有効電力 [W]
Q_var :無効電力発生用インバータの出力無効電力 [var]
Vd :無効電力発生用インバータの直流バッファ電圧 [V]

送電コイルと受電コイルとの結合係数が 0.1、0.2、0.3の場合についてシミュレーションした結果

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シミュレーションの結果、いずれの結合係数でもSOCはほとんど同じように変化しており、完全放電( SOC = 0 )の状態から満充電( SOC = 1 )になるまでの時間は結合係数の影響を受けていないことがわかります。バッテリの充電電圧(Vbt)と充電電流(Ibt)に注目しても結合係数によらず充電制御(CC – CV制御)ができていることがわかります。
 一方、無効電力発生用インバータが発生する無効電力(Q_var)は結合係数によって変化します。バッテリの充電電圧(Vbt)と充電電流(Ibt)は、この無効電力(Q_var)を調整して制御しており、結合係数が違っていても満充電までの時間を同じにすることができます。
 このシミュレーションの制御回路では、無効電力発生用インバータの直流バッファ電圧(Vd)を制御していますが、直流バッファ電圧(Vd)と無効電力(Q_var)は同じように変化するため、等価的に無効電力(Q_var)を制御していると考えてよいということがわかります。

まとめ


以上のように、ワイヤレス充電システムのシミュレーションにパワーエレクトロニクス回路用のシミュレータであるPSIMが有効に使えることがわかります。
 すなわち、ワイヤレス充電システムはパワエレ技術で設計・開発することができるということです。もっと正確に言うと、分布定数回路モデルで電磁波の放射を扱う「電波方式」と、集中定数回路モデルで空芯トランスによる結合と考える「電磁誘導方式」とでは、使う理論や原理が全く異なり、「電磁誘導方式」ならばパワエレ技術で扱えるということです。
 このような考え方に基づいて考案し本報で紹介した特許技術の有効性は、試作装置による実際の動作とPSIMによるシミュレーションがよく一致することで確認しました。
 今後は、関連製品を開発しているエンジニアにこの技術を広める活動を推進し、電気自動車用ワイヤレス充電システムなどの普及に貢献したいと考えています。

Mywayプラス PSIM担当より


本事例をバージョンアップさせた事例をPSIM Cafeにてご紹介しています。ぜひこちらもご覧ください。

実際にシミュレーション可能なPSIM回路ファイル(*.psimsch)をダウンロードできますので、ぜひご活用ください!



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