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使用事例


マトリックスコンバータ位相角推定のための単相PLL回路

芝浦工業大学 齋藤 真先生

研究内容


本研究室では、“恋人はオシロスコープ。シミュレーションは友達以上恋人未満”をスローガンに、実験を中心に電力変換回路を研究しています。PSIMは、原理確認に重宝しています。右の写真(図1)は、開発中の“単相/三相マトリックスコンバータ( 三相200V20kVA )”の主回路です。単相/三相間の瞬時電力アンバランスを小容量のキャパシタで吸収し、単相電源側の力率1制御と三相負荷側の電圧・電流波形制御を両立しています。誘導機の四象限運転はもちろんのこと、トルク電流を数 ms で制御できます。この他、本研究室では、“PCカードサイズ・ノートPC用ACアダプタ”など、前衛的なシステムを開発しています。

PSIM使用事例


上記マトリックスコンバータなど、単相電源と同期して動作する変換器では、単相電源の位相角を推定する必要があります。そのための回路として、図2に「単相PLL回路」を示します。ここでは、筆者らが考案した「ヒルベルト変換による単相 d-q 変換」をベースに、ヒルベルト変換器を微分器に置き換え、単相電圧 vs を実部、その微分値を虚部とする α-β 座標量を、vs 位相角推定値 theta で d-q 座標量に変換しています。
また、その q 軸成分 vsq を積分し、基準位相角 theta_ref と合算することで、theta を得ています。この theta は、vs を cos 波とみなした時の位相角になります。

動作原理の詳細は、文献 ( M.Saito, T.Shimizu and N.Matsui, "A control strategy of single-phase active filter using a novel d-q transformation." in Proc. of IEEE IAS '03, Vol.2, pp.1222-1227, 2003 ) を参照ください。
なお、vs の虚部をヒルベルト変換器で演算すると、微分器を使用した場合よりも、PLL の応答とスプリアスを改善できます。

上図に PLL 動作例を示します。上段は、電源電圧 vs(赤)、その虚軸量(青)、vs と同期した正弦波(緑)、中段は、基準位相角 theta_ref、下段は、位相角推定値 theta です。theta_ref、theta とも単位は「度」です。このPLLは、vs の位相角と theta の差がゼロに収束するよう動作します。
これを確認するために、theta_ref の初期値を vs より90度進ませています。シミュレーション開始から2ms程度で、theta は一定の傾きで変化し、位相推定が完了しています。theta_ref がゼロのとき、theta は-90度となっており、vs と theta_ref の位相差が補償されています。また、上段緑に示す cos(theta) 波形は、vs と同相に制御されています。これらから、theta が vs の位相角を指していることが確認されます。

モジュール構成

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