2026年08月05日(水)
- パワーエレクトロニクス基礎
パワエレ開発用コントローラとは?役割や必要性をわかりやすく解説【パワエレ開発シリーズ④】
制御用ハードウェアとは?A/D変換・PWM・マイコン・DSP・FPGAの役割をわかりやすく解説
パワエレの電力変換回路を目的どおりに動作させるには、電圧や電流などを測定し、その結果に基づいてパワー半導体のスイッチングを制御する必要があります。この一連の処理を担うのが、制御用ハードウェアです。この一連の処理を担うのが制御用ハードウェアです。
本記事では、パワエレ制御におけるA/D変換、制御演算、PWM出力の流れと、それらを実行するマイコン、DSP、FPGAの役割をわかりやすく紹介します。
制御用ハードウェアとは? ~ 制御用ハードウェアはどのような役割を果たすのか? ~
電圧・電流・速度など
マイコン・DSP・FPGA
モータ・インバータ等
制御用ハードウェアは、センサから受け取った信号を使って制御演算を行い、電力変換回路へ制御信号を出力します。代表的な処理の流れは次のとおりです。
- 電圧、電流、速度、位置などをセンサで測定する
- A/D変換やカウンタ機能を使って測定値を取得する
- 取得した値を使って制御演算を行う
- 演算結果に基づいてPWM出力を更新する
- PWM信号に従って電力変換回路のパワー半導体をスイッチングする
これらの処理を一定の周期で繰り返すことで、出力電圧や電流などを目標値へ近づけます。
A/D変換とは? ~ A/D変換は電圧や電流をどのように取得するのか? ~
電圧センサや電流センサの出力は、連続的に変化するアナログ信号です。制御用ハードウェアで演算に使用するため、A/D変換(ADC:Analog-to-Digital Converter)によってデジタル値へ変換します。
取得した値は、センサの仕様やA/D変換の入力範囲に合わせて、実際の電圧や電流へ換算します。必要に応じてオフセット補正やフィルタ処理などを行い、制御演算に使用します。
制御演算とは? ~ 制御演算では取得した値をどのように利用するのか? ~
制御演算では、測定値と目標値を比較し、電力変換回路へどのような出力を指示するかを計算します。例えば出力電圧を一定に保つ制御では、目標電圧と測定電圧の差などを使って、PWMのデューティ比に対応する指令値を求めます。
このように、測定値から制御出力を求める演算方法を制御アルゴリズムと呼びます。実際の制御プログラムでは、A/D変換値の取得、制御演算、PWM設定、状態管理、異常の確認などの処理を組み合わせます。
PWM出力とは? ~ PWM出力では電力変換回路はどのように制御するのか? ~
PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)は、一定周期の中でONになっている時間の割合を変える方法です。制御用ハードウェアは、制御演算で求めた指令値に基づいてPWMのデューティ比や出力タイミングを設定します。
PWM信号は、ゲート駆動回路などを介してパワー半導体へ伝えられます。パワー半導体のON・OFFを切り替えることで、電力変換回路の出力を調整します。
制御処理とは? ~ 制御処理はなぜ一定周期で実行されるのか? ~
パワエレ制御では、測定値の取得、制御演算、PWM出力の更新を決められた周期で実行します。処理を開始するきっかけには、PWMキャリアやタイマなどから生成される割り込み信号が利用されます。
例えばPWMキャリアに同期して割り込みを発生させると、キャリアの山や谷など、あらかじめ決めたタイミングでA/D変換や制御演算を開始できます。このような処理が「PWMに同期してA/D変換する」「PWM同期割り込みで制御演算を行う」といった表現につながります。
制御周期と処理のタイミングは、スイッチング周波数、制御対象の応答、演算量などを踏まえて設計します。複数の制御処理を、異なる周期の割り込みで実行することもあります。
マイコンとは? ~ マイコンはパワエレ制御ではどのような役割を担うのか? ~
マイコン(マイクロコントローラ)は、CPU、メモリ、タイマ、通信機能、A/D変換、PWMなど、制御に必要な機能を一つのデバイスにまとめたものです。
センサ値の取得、制御演算、PWM出力、通信、状態管理などをプログラムで実行できます。周辺機能が一つのデバイスに集約されているため、さまざまな組み込み制御に使われています。
DSPとは? ~ DSPはパワエレ制御ではどのような役割を担うのか? ~
DSP(Digital Signal Processor)は、数値演算や信号処理を高速に実行することを重視したプロセッサです。積和演算などを効率よく処理でき、一定周期で多くの演算を行う制御に利用されます。
パワエレ制御では、座標変換、フィルタ処理、電流・電圧制御などの演算を短い周期で実行する用途があります。製品によっては、A/D変換やPWMなどの周辺機能を別のデバイスや入出力基板と組み合わせて使用します。
FPGAとは? ~ FPGAはパワエレ制御ではどのような役割を担うのか? ~
FPGA(Field-Programmable Gate Array)は、内部のデジタル回路を用途に合わせて構成できるデバイスです。複数の処理を並列に動作させたり、入出力信号を細かなタイミングで処理したりできます。
パワエレ制御では、PWM信号の生成、高速な信号処理、複数チャンネルの入出力処理などに利用されます。DSPやマイコンとFPGAを組み合わせ、制御演算と高速な入出力処理を分担する構成もあります。
マイコン・DSP・FPGAとは? ~ マイコン・DSP・FPGAはそれぞれどのような役割を担うのか? ~
| デバイス | 主な特徴 | パワエレ制御での利用例 |
|---|---|---|
| マイコン | CPU、メモリ、A/D変換、PWMなどの機能を一つにまとめやすい | 制御演算、入出力、通信、状態管理 |
| DSP | 数値演算や信号処理を高速に実行する | 短周期の電流・電圧制御、座標変換、フィルタ処理 |
| FPGA | 並列処理と細かなタイミング制御を行える | PWM生成、高速入出力、複数チャンネルの並列処理 |
実際の機能や性能はデバイスごとに異なり、マイコンとDSPの両方の特徴を持つ製品もあります。必要な制御周期、演算量、入出力数、開発方法などに合わせて選択します。
演算デバイス、制御基板、制御システムの関係
マイコン、DSP、FPGAは、制御演算や信号処理を担う演算デバイスです。実際の開発では、これらのデバイスを単独で使うだけでなく、メモリ、通信、A/D変換、PWM、デジタル入出力などを備えた制御基板として使用します。
| 階層 | 内容 |
|---|---|
| 演算デバイス | マイコン、DSP、FPGAなど、演算や信号処理を行う半導体 |
| 制御基板 | 演算デバイス、メモリ、通信、入出力などを搭載した基板 |
| 制御システム | 制御基板、入出力基板、ソフトウェア、開発・デバッグ機能などを組み合わせた環境 |
パワエレ用の制御システムでは、演算を担当する基板と、A/D変換やPWM出力などを担当する入出力基板を組み合わせる構成もあります。制御プログラムは演算用の基板で実行され、入出力基板を通じてセンサや電力変換回路と信号をやり取りします。
制御用ハードウェアを理解すると現場の用語を理解しやすくなる理由とは?
「A/D変換値を読む」「PWMレジスタを更新する」「PWM同期で制御演算を行う」といった表現は、制御用ハードウェア上で実行される処理を表しています。
測定、演算、出力という一連の流れを理解すると、個々の関数や設定が制御全体のどこに位置するかを捉えやすくなります。使用するハードウェアによって、これらの処理を関数、レジスタ、設定画面などから扱う方法が変わります。
まとめ|制御用ハードウェアを理解するポイント
パワエレ制御用ハードウェアは、電圧や電流などを取得し、制御演算を行い、PWM信号を電力変換回路へ出力します。これらの処理を一定周期で繰り返すことで、電力変換回路の出力を調整します。
マイコン、DSP、FPGAは、それぞれ異なる方法で演算や入出力処理を担います。実際の開発では、これらを搭載した制御基板や、入出力基板、開発ソフトウェアなどを組み合わせた制御システムを使用します。
次回は、DSPボードや入出力ボード、開発・デバッグ環境を組み合わせたデジタル制御システム「PE-Expert4」について紹介します。

パワエレ開発用コントローラ 「デジタル制御システム PE-Expert4」の製品画像
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