2026年08月24日(月)
- 評価・試験
グリッドエミュレータとは?電力系統を再現して評価する理由を解説
グリッドエミュレータとは?電力系統を再現して評価する仕組みを解説
はじめに
太陽光発電や蓄電システム、EV(電気自動車)充電関連機器など、電力系統に接続して使用する機器を評価する際には、実際の使用環境で起こり得るさまざまな電力系統の状態を想定する必要があります。
しかし、実際の電力系統を試験のために自由に変化させ、電圧や周波数などの異なる状態をつくることは困難です。
そこで使用されるのが、グリッドエミュレータです。
グリッドエミュレータは、電力系統の電圧や周波数などを試験環境で再現し、電力系統に接続される機器の動作を評価するための装置です。
前回までに紹介したバッテリエミュレータ(バッテリシミュレータ)が、実バッテリの代わりとしてバッテリの電気的な特性や挙動を再現するのに対し、グリッドエミュレータは電力系統側の状態を再現します。
蓄電システムの評価を例に挙げると、次のように再現したい状態や試験内容に応じてエミュレータを使い分けます。
- バッテリ側を再現する場合:バッテリエミュレータ
- 電力系統側を再現する場合:グリッドエミュレータ
また、グリッドエミュレータは蓄電システムだけでなく、太陽光発電用PCSやEV充電関連機器、インバータなど、電力系統に接続されるさまざまな機器の評価に使用されます。
| エミュレータ | 再現するもの | 評価のイメージ |
|---|---|---|
| バッテリエミュレータ | バッテリ側の状態・挙動 | バッテリの状態を再現してPCSなどを評価 |
| グリッドエミュレータ | 電力系統側の状態 | 系統の状態を再現してPCSなどを評価 |
本記事では、電力系統とは何か、グリッドエミュレータとは何をする装置なのか、なぜ電力系統を再現する必要があるのか、どのような状態を再現できるのか、利用するメリットについて分かりやすく解説します。
電力系統とは何を意味するのか?
電力系統とは、電気をつくる設備、電気を送り届ける設備、電気を利用する設備などを電気的につないだネットワーク全体のことです。
電力系統には、たとえば次のような設備があります。
| 設備の役割 | 主な設備 |
|---|---|
| 電気をつくる | 発電所、太陽光発電など |
| 電気を送る | 送電線、変電所、配電線など |
| 電気を利用する | 家庭、工場など |
| 電気を受け取り・送り出す | 蓄電システムなど |
これらの設備をつなぎ、電力をやり取りするためのネットワーク全体を電力系統(グリッド)と呼びます。
グリッドエミュレータとは何をする装置なのか?
グリッドエミュレータとは、電力系統(グリッド)のさまざまな状態を試験環境の中で再現するための装置です。
電力系統では、さまざまな要因によって電圧や周波数などが変化することがあります。
そのため、電力系統に接続される機器を評価する際には、グリッドエミュレータを用いて電圧や周波数などを設定・変化させ、実際の電力系統で起こり得る状態を再現します。
これにより、実際の電力系統そのものを試験のために変化させることなく、さまざまな系統状態における機器の動作を評価できます。
実際の電力系統とグリッドエミュレータの違いとは?
実際の電力系統とグリッドエミュレータの違いは以下の表に示す通りです。| 項目 | 実際の電力系統 | グリッドエミュレータ |
|---|---|---|
| 役割 | 接続された設備へ電力を供給・融通する | 電力系統を模擬して試験対象機器へ電力を供給する |
| 電圧・周波数 | 試験のために自由に変更することは難しい | 試験条件に合わせて設定・変化させられる |
| 異常状態の評価 | 意図的に発生させることは難しい | 設定した条件を試験環境で再現できる |
| 繰り返し試験 | 同じ系統状態を繰り返すことは難しい | 同じ条件を設定して繰り返し評価できる |
評価したい電力系統の状態を、試験条件に合わせて再現できることがグリッドエミュレータの特徴です。
なぜグリッドエミュレータを使用し電力系統を再現する必要があるのか?
電力系統を再現する目的は、電力系統の状態が変化したときに、系統に接続される機器がどのように動作するのかを評価することです。
太陽光発電用PCS(Power Conditioning System:パワーコンディショナ)や蓄電システム用PCS、EV充電関連機器などを評価する際には、通常の系統状態だけでなく、電圧や周波数などが変化した状態でも、試験対象機器が適切に動作するかを確認する必要があります。
しかし、実際の電力系統を試験のために自由に変化させることは困難なため、グリッドエミュレータを使って評価したい系統状態を試験環境に再現し、その状態における機器の動作を評価します。
グリッドエミュレータでは何を再現できるのか?
グリッドエミュレータでは、試験目的に合わせて電力系統のさまざまな状態を設定・変化させます。
代表的なものを整理すると、次のようになります。
| 設定・変化させる項目 | 再現する状態のイメージ |
|---|---|
| 電圧 | 系統電圧の上昇・低下 |
| 周波数 | 系統周波数の変化 |
| 位相 | 交流の波のタイミングや位相のずれ |
| 電圧波形 | 系統側で生じるさまざまな波形状態 |
| 瞬時的な変化 | 瞬低など、一時的に系統状態が変化する状況 |
ここでいう「位相」とは、2次元・3次元といった位置や空間のことではありません。
交流の電圧や電流は周期的に変化しており、位相はその波が周期の中のどの位置にあるのかを表します。
グリッドエミュレータでは、電圧・周波数・位相などの条件を設定することで、さまざまな系統状態を想定した評価環境をつくることができます。
Mywayのグリッドエミュレータ
Mywayでは、電力系統を模擬してPCSなどの評価・試験を行うためのグリッドエミュレータ(回生型交流電源/双方向交流電源)をご用意しています。
大容量のパワーコンディショナの評価・試験に対応しており、150kW単位で容量を拡張することが可能です。
また、停電・電圧降下・電圧上昇などの異常波形を生成でき、急速充電器やパワーコンディショナの評価、系統連系規程に対応した試験にも利用できます。
回生機能を備えているため、逆潮流時のエネルギーを回生できるほか、高効率なデジタル制御技術により、高速電流応答と高精度なプログラム運転を実現しています。
製品の詳しい特徴・仕様・用途・システム構成については、 Mywayのグリッドエミュレータ|回生型交流電源(双方向交流電源)製品ページ をご覧ください。
まとめ

グリッドエミュレータで電力系統の状態を再現し、系統に接続される機器を評価するイメージ
グリッドエミュレータは、電力系統の電圧や周波数などを試験環境で再現し、電力系統に接続される機器を評価するための装置です。
実際の電力系統では、試験のために電圧や周波数などを自由に変化させることは困難です。グリッドエミュレータを使用することで、電圧・周波数・位相・電圧波形・瞬時的な変化など、さまざまな系統状態を設定し、その条件で機器の動作を評価できます。
太陽光発電用PCSや蓄電システム用PCS、EV充電関連機器など、電力系統に接続される機器の評価に活用されています。
Mywayでは、電力系統を模擬してPCSなどの評価・試験を行うためのグリッドエミュレータ(回生型交流電源/双方向交流電源)をご用意しています。
製品の詳しい特徴や仕様については、 Mywayのグリッドエミュレータ|回生型交流電源(双方向交流電源)製品ページ をご覧ください。