パワエレコラム

2026年03月23日(月)

  • 開発用ツール製品

走行中ワイヤレス給電が拓くEVの新たなインフラ

EVの普及が進む中で、課題の一つとなっているのが充電です。充電器の設置拡大は進んでいるものの、充電待ちや充電時間の負担は依然として残っています。

そこで注目されているのが、車両が道路を走行しながら電力を受け取る「走行中ワイヤレス給電」です。

停車中の充電だけに頼らず、走りながらエネルギーを補えるようになれば、EVの使い方そのものを変える可能性があります。

特に商用車や公共交通では、充電計画の柔軟性が高まり、運用効率の改善にもつながると期待されています。

 

走行中ワイヤレス給電とは

走行中ワイヤレス給電は、道路側に設置した送電コイルから、車両側の受電コイルへ非接触で電力を伝送する技術です。

電磁誘導や磁界共鳴を利用して給電するため、コネクタの抜き差しが不要で、走行中でも電力を受け取れる点が大きな特長です。

この技術が実用化されれば、EVは「充電のために止まる」だけでなく、「必要な分を走りながら補う」ことが可能になります。

特に、路線バス、物流車両、配送車両など、決まったルートを長時間走行する車両では高い効果が期待されています。

車載電池を必要以上に大きくしなくても運用しやすくなるため、車両の軽量化やコスト低減にもつながる可能性があります。

 

また、充電の自由度が高まることで、航続距離への不安を軽減できる点も大きな魅力です。

道路インフラと車両が連携してエネルギーを支える世界観は、EVの社会実装をさらに前進させるものです。

走行中ワイヤレス給電は、単なる利便性向上技術ではなく、EV社会を支える次世代インフラとして期待されています。

 

走行中ワイヤレス給電の技術課題

一方で、走行中ワイヤレス給電の実用化には多くの技術課題があります。

第一に、走行中の位置ずれです。車両は常に道路の中央を正確に走るわけではなく、左右のずれや車高変動も発生します。

送受電コイルの位置関係が変わると結合状態が変動し、給電効率が低下しやすくなります。

静止中のワイヤレス給電よりも、はるかに厳しい条件で安定した伝送を実現しなければなりません。

第二に、高出力化と高効率化の両立です。走行中に十分な電力を供給するには高出力化が必要ですが、

出力を上げるほどスイッチング損失、発熱、EMI対策などの難易度が高まります。限られたスペースの中で、高効率かつ高出力密度の電力変換をどう実現するかが重要です。

第三に、制御の複雑さがあります。車速、負荷、結合状態が刻々と変化する中で、安定した給電を維持するには、高速かつ高精度な制御が欠かせません。

単に回路性能が高いだけでは不十分で、変動条件に追従できる制御技術と評価技術が求められます。さらに、道路側設備と車両側設備を含めたシステム全体で最適化を図る視点も必要です。

さらに、安全性、EMC、標準化への対応も不可欠です。人や車両の近くで高周波電力を扱う以上、安全設計や電磁両立性の確保は必須です。

加えて、道路側設備と車両側設備の相互運用性をどう確保するかも、普及に向けた大きなテーマになります。

 

弊社製品(PE-Expert4/SiCインバータ)が活用されている理由

こうした課題に対応するうえで重要なのが、評価環境と電力変換技術です。

走行中ワイヤレス給電では、回路、制御、実装のすべてを高いレベルで詰めていく必要があり、開発段階での評価の質がそのまま製品性能に直結します。

PE-Expert4が活用される理由は、条件変動の大きいパワエレシステムに対して、柔軟な評価・検証を行いやすい点にあります。

車速変動、位置ずれ、負荷変動など、実運用を想定した多様な条件で検証を進められることは、走行中ワイヤレス給電のような複雑なシステムにおいて大きな強みです。

制御パラメータの調整やアルゴリズム検証を効率よく進められることで、開発スピード向上にも貢献します。

一方、SiCインバータが活用される理由は、高効率・高周波・高出力密度を実現しやすいことにあります。

SiCデバイスはスイッチング損失の低減に有利であり、高周波動作にも適しているため、ワイヤレス給電システムとの親和性が高いデバイスです。

高周波化によって受動部品の小型化も図りやすく、装置全体の小型・高性能化にもつながります。

走行中ワイヤレス給電では、「電力を送れること」だけでなく、「高効率で、安定して、変動に追従できること」が重要です。

そのため、PE-Expert4による評価・制御検証と、SiCインバータによる高性能な電力変換は、開発を支える重要な要素となっています。

研究段階から実装検討まで一貫して活用できることも、両製品が選ばれる理由の一つです。

加えて、電気自動車向けワイヤレス給電では、標準化の流れの中で85kHz帯の伝送周波数が想定されており、

実機評価においてもこの周波数帯を意識した検証が重要になります。文献でも、EV向けワイヤレス給電では85kHz帯の利用が予定され、

地上側ではインバータによって数十kHzの高周波交流を生成する構成が示されています。

そのため、85kHz帯での試験・評価に対応できるPE-Expert4とSiCインバータは、ワイヤレス給電システムの開発環境として活用しやすい点も大きな理由の一つです。

特にSiCインバータは高周波動作との親和性が高く、高効率な電力変換回路の検証を進めやすい点で有効です。

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